アクションスポーツのアパレルには、あまり意識されない逆説がある。文化が派手になるほど、静かなものの価値が上がるのだ。スケート、サーフィン、BMX でもそうだし、モトクロスでは疑いなくそうである。1988年ごろから、この競技の初期設定は「多いほど良い」だった。
いちばん派手な競技のいちばん派手なブランドである Fox Racing は、そのことをつねに分かっていた。広告とポスターに載るネオンとトライバルの看板カラーウェイが出るたびに、彼らは暗く控えめな版も作り、それが注目の的になりたくないライダーたちのところへ渡っていった。グレー&ブラックのカラーウェイは、「全員が暗闇で光りたいわけではないと分かっている」という Fox なりの言い方だった。
こうした静かな一点は、ふつう記憶される90年代モトクロスとは別の物語を語る。あの競技はネオンとエナジードリンクだけではなかった。早朝があり、泥だらけの練習日があり、この一切をパフォーマンスではなく手仕事として扱うライダーたちがいた。グレー&ブラックの Fox のパンツは、そういう朝と、そういうライダーのためのギアだ。
デザインの観点でいえば、抑制のほうが派手より難しい。鮮やかな色と大きなグラフィックは、それ自体で視覚的な興味を作ってしまう。彩度を落としたパレットでは、プロポーション、パネルの割り、素材のコントラストでデザインを成立させるほかない。Fox のデザインチームは明らかにそれを理解していた。彼らの暗いカラーウェイは、明るいものが必要としない水準で構図が正確だ。
ビンテージの市場でも、こうした控えめな一点は独自の支持を集めるようになった。派手なものに惹かれて入ってきたコレクターが、目が肥えるにつれて静かなカラーウェイへ寄っていくことは多い。このギアには、文化のなかに長くいた人にこそ響く成熟がある。
ビンテージの Fox Racing パンツ、グレー&ブラックが1点ある。状態は良好、すべてオリジナルのままだ。ここで見られる。



